2025.7.29
愛知のサマーセミナー
愛知では、昨年、約850の講座に3万5千人からの人たちが参加するサマーセミナーをやったそうだ。主催は、愛知県私立学校教職員組合、私学をよくする愛知父母協議会、愛知県高校生フェスティバル実行委員会などで構成する愛知サマーセミナー実行委員会だ。愛知県や名古屋市はじめ県内の市町村が後援している。私は愛知でこんな大規模なセミナーが毎年開かれていることは全く知らなかった。今年は、36回目で、7月19日から21日の三日間、名古屋中学・高等学校などで開催されたのだ。テーマは「戦後80年、平和と共生を作り出す『21世紀型学び』」だ。3日間、午前に2限、午後2限の講座が全部で千程ある。4万人の参加を予定しているという。なんとも凄いことだ。1日目の最初の講演は、金本弘日本被団協代表理事の『どうする!!危険な世界に生きる私たち』だった。
特別講師としてのお誘い
このセミナーの特別講師として、私も誘われたのだ。誘ってくれたのは、副実行委員長の横田正行さんだった。お誘いの理由は、「依頼書」によれば、私が「核兵器廃絶と憲法9条」と題するブログで書いている「『核兵器も戦争もない世界』を展望する核心を突いた鋭い指摘がとても参考になりました。そして、私たちの生き方が問われているとひしひしと感じました。」ということだった。そして、特に印象に残っていることとして、私のブログを丁寧に引用してくれたのだ。依頼書は「今年のサマセミのテーマである『戦後80年、21世紀型学びが反戦・平和を世界に拡散する!』を考えるにあたり、大久保先生が指摘されていることを学ぶ必要があると強く思っています。生徒や父母、教師、そして市民の皆さんにぜひお話を聞かせてください。」と結ばれていた。このような依頼を断ることなどできるわけがない。ということで、7月21日、名古屋まで出かけて行ったのだ。
講義のテーマ
私の講義のテーマは「『核兵器も戦争もない世界』を創るために!!」だ。「80年前、原爆が投下されました。核兵器の使用は『全人類に惨害』をもたらします。にもかかわらず、核兵器使用の危険が高まっています。私たちは何をすればいいのか。『原爆裁判』を題材に考えます。」というのがキャッチコピーだ。持ち時間は80分。会場は100名くらい入る階段教室で、ほぼ満席だった。
講師席のすぐ前の最前列にあどけなさが残る少女が三人いた。「何年生?」と聞いたら「1年生」と答えていた。高校1年生なのだ。彼女たちは私服だったけれど、何人かの制服の高校生たちも聴講していた。普段、私の話の聞き手は年配者が多いのだけれど、今日は違う。うれしい。問題は、私の話がその子たちに伝わるかどうかだ。
高校生の感想文 その1
高校生たちが25通の感想文を寄せてくれた。いくつか要旨を紹介する。最初に、最前列に座っていた高校1年生のものだ。
サマーセミナーに参加するのは初めてだったけど、講師の方の解りやすい説明のおかげで、今まで知らなかった戦争について細かいところまで知ることができました。当時の状況や政府の取った行動・原因を理解することが出来ました。核兵器による被害の大きさなどを聞いて改めてこわさを感じることができました。被害にあった人たちのためにも、戦争であったことを活かしていければよいなと思いました。
世界にはまだまだ平和ではない国や、核兵器を持ち、いつでも戦争ができる状態にある国があるということがわかりました。今の日本では想像もできない歴史があることがわかった。サマーセミナーに来て、この講座をうけなければわからないことを知れたので、来てよかったと思った。
このサマーセミナーを受ける前は、戦争のことは自分なりに学校で調べたりしていて、何となく知っていると思っていたけれど、この「核兵器も戦争もない世界を創るために」という講義をうけてまだまだ知らないことがたくさんあったし、私たち高校生よりも高齢の方が多くておどろいた。今の日本は戦争の話を語れる人が減っている。だからこそ、まだ将来の長い私たちが今回聞いたことをしっかり覚えておいて、いつか自分の子どもたちに受け継いだり、情報を共有したりして、平和な今の世界を大切にしていきたいと思った。核兵器の恐ろしさもよくわかった。最前列で聞けて、大久保さんと少し話せてうれしかったです。
こんな感想文を書いてもらっただけでも、本当にうれしい。
高校生の感想文 その2
長文の感想文もたくさん寄せられていた。その内の4通の要旨を紹介する。いずれも3年生の女子だ。
原爆裁判や天地の公理など、学校の授業では学べないようなことについての話を聞くことができて良かった。裁判によって核兵器の恐ろしさを示すことは重要なことだと思った。しかし、「被害の結果が原告の言うとおりかどうか。及び原爆の性能などは知らない」などと答弁する政府に対してはモヤモヤした気持ちになった。現代の自分たちが平和で安全な生活を送れているのは、核兵器禁止条約ができるまで努力を重ねてくださった方がいたからだ。
今回の講座で原爆裁判を通して、原爆の被害の大きさや被害者の核廃止への叫びを改めて知ることができました。被爆者が辛い日常生活を送っていたことを想像すると胸が苦しくなました。核廃止をできないことではないと知ることができてよかったです。平和な世界を創るために自分で出来ることを見つけ、積極的に行動することが大切だと気付くことができました。
私がこの講座で感じたことは、核投下後の日本の対応が全く駄目だということです。私は戦争のことを全く知らないので、戦争後の被爆者への支援があったとばかり思っていました。しかし、この講座でそれが全く行われていないことを知りました。そして、日本がアメリカの「核とドルの傘下」にあるという現状を知り、言葉が出ないほど絶望を感じました。一つの核で何人もの人が死に、そして戦後も苦しめられたのか。想像を絶するものだと思います。アメリカが核投下は正義だと思っていることに深い悲しみを感じました。こんな悲劇が二度と起こらないためにも、核をなくすべきだと考えました。
私たちは戦争を知らない世代だからこそ、戦争について知り、考え、次世代に語り継ぐ必要があると思い、今回の大久保先生の講座を受講しました。私の通っている高校は平和探求も活発で、2回の修学旅行では沖縄と長崎に行きました。また、家族旅行で広島に行ったので、今まで戦争や平和について考える機会は多かったです。ですが、今回の講義を受けて、私の戦争と平和への理解はまだまだだなと思いました。原爆投下についての裁判で、政府の動きや裁判所の判断、核兵器禁止条約の禁止から廃絶まで流れなど、原爆が投下された背景についても勉強になりました。大久保先生のお考えも聞くことができ、とても心に残るものばかりでした。「核兵器も戦争もない世界」を創るために、未来に向けて私たちが今できることを考えていきたいと思いました。
高校3年生になるとこんな感想文を書いてくれるのだ。私の話は伝わっていたのだ。私の意図を完全に受け止めてくれていると思うと胸が熱くなる。
まとめ
ところで、中学生からの感想文も3通ほどあった。「話が難しいと思った」、「言葉づかいが難しいなと思った」としながらも、「核兵器の恐ろしさや醜さを感じた」とか「原爆被害者やその他の戦争被害者への補償についての政府の考えはおかしいと感じた」などいう感想を書いている。この子たちにも、それなりに受け止められているのだ。
子どもたちの成長に合わせて、日々、教育に携わっている先生方の大変さを垣間見たような気持にもなるけれど、子どもたちはきちんと物事を理解できるのだということを確信する機会でもあった。
講義の冒頭に「今、世界や日本はいい方向に向かっていると思いますか」と聞いたら、大人も子どもも誰もそう思っていなかった。けれども、このような感想文を読めば、私たちの未来は、決して、絶望する必要はないと思えるのだ。もちろん、絶望などしている場合ではないのだけれど。
このセミナーに参加することによって、私は新たなエネルギーをもらえたようだ。そんな機会を提供してくれた横田さんたちに感謝したい。(2025年7月28日記)
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