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「核兵器廃絶」と憲法9条



2025.11.6

トランプが核実験再開を言い出した!!

より危険になった世界
 トランプが核実験再開を言い出した。「核爆発を伴うものではなく未臨界実験だから心配いらない」などという言説も流布されているけれど、トランプは「爆発を伴わない実験」に限定していない。そもそも、どちらの実験であれ核実験であることには変わりがない。核実験の再開は核兵器使用の準備である。使わない兵器の実験など無意味であり無駄だからだ。トランプは核戦争の準備を始めたのである。
 トランプに核兵器を使用しない意思もなくす意思もないことは明らかだ。彼は、第1期政権の時「なぜ核兵器を使用してはいけないのか」を何度も確認したそうだ。彼には核兵器使用についての躊躇いはなかったのだ。そして、今、彼は再び「核のボタン」を押す権限を持っている。彼がそのボタンを押せば核ミサイルが発射されることになる。そのミサイルを呼び戻す方法はない。トランプによって、世界はより危険になったのだ。まず、そのことの確認をしておきたい。

核兵器使用は「タブー」
 米国も締約国である核兵器不拡散条約(NPT)は「核戦争が全人類に惨害をもたらす」のでそれを避けるための条約である。だから、NPT6条は、核兵器の拡散だけではなく、核軍拡競争の停止や核軍縮を核兵器国に求めているのである。また、「核戦争に勝者はない。核戦争を戦ってはならない」ことは核兵器国の首脳の一致した見解でもある。核戦争は国際法上も国際政治の上でも「タブー」なのである。これは「核兵器禁止条約」の要請ではないので、トランプも拘束されている原則である。トランプはそのタブーに挑戦したのである。
 また、米国は包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名している。この条約は発効していないけれど、署名国には「条約の目的と趣旨を損なわないよう行動する義務」がある(ウィーン条約法条約18条)。彼は国際法も国際政治の到達点も完全に無視しているのである。彼は、大統領選に敗北した時、支持者を議会に乱入させた「無法者」だけれど、今回も「無法者」ぶりを発揮しているのである。

日本政府の態度
 高市政権は「核実験再開指示」についてコメントしないとしている。「唯一の戦争被爆国」である日本政府が反対しないのである。なぜそのような態度なのであろうか。それは、トランプや高市は核兵器を必要だと考えているからである。彼らにとって核兵器は自国の安全を確保するための最終兵器(「守護神」)なのである。核兵器によって「敵国」からの攻撃を抑止し、万一攻撃すれば「核兵器で反撃してお前を抹殺するぞ」という脅しで自国の安全を確保するという「核抑止論」に帰依しているのである。
 核戦力を強化している中国、挑発を繰り返す北朝鮮、侵略戦争を継続するロシアなどに対抗するためには、自衛隊の「敵基地攻撃能力」だけではなく、国を挙げて防衛力の強化を推進し、米国の核戦力を含む拡大抑止に依存するとしている日本政府からすれば、米国の核戦力が強化されることに反対する理由はないのである。むしろお願いしたいことであろう。反対するわけにはいかないし賛成ともいえないので「ノーコメント」なのである。

「安保三文書」の前倒しと自民と維新の「合意文書」
 高市政権は、トランプの核実験再開指示に反対しないだけではなく「安保三文書」を前倒しで進めると米国政府に約束している。これは、日本の軍国主義化の速度を速めるということを意味している。しかも、自民党と維新の「連立政権合意文書」には「憲法9条改正に関する両党の条文起草協議会を設置する。設置時期は、25年臨時国会中とする」との条項もある。
 高市政権は核兵器の力によって日本の安全を確保するとするだけではなく、日本国憲法9条を廃棄しようとしているのである。「国家安全保障戦略」によれば、中国、北朝鮮、ロシアに対抗して防衛力を強化することが「希望の世界」への道だとされている。他方、日本国憲法は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれらの安全と生存を保持する」としている。「核のホロコースト」の上に徹底した非軍事平和思想にもとづいているのである。
 「核を含む軍事力による安全」を求める勢力からすれば、「平和を愛する諸国民の公正と信義による安全」などを想定する日本国憲法は「獅子身中の虫」なのである。彼らはその虫を退治したいのである。
 私たちは「核兵器による平和」か「平和を愛する諸国民との公正と信義による平和」かの大分岐点にあるのだ。
 トランプの核実験再開指示発言は、私たちに、改めてそれを問いかけている(文中敬称略)。(2025年11月5日記)




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