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「核兵器廃絶」と憲法9条



2026.3.3

世界が壊されつつある-「無法者」トランプをのさばらせるな-

 世界が壊されつつある。その主犯はトランプだ。彼は、昨年6月にはイランの核施設を攻撃し、今年1月にはベネズエラに武力攻撃を仕掛けマドゥロ大統領夫妻を拉致した。今度は、またネタニヤフとともにイランを空爆し最高指導者ハメネイ師の家族や側近を殺している。学校もミサイル攻撃の対象とされ子どもたちにも死傷者も出でいる。トランプは、あちこちで人を殺傷し、拉致し、工作物や秩序を破壊しているのだ。

トランプのイラン攻撃の理由
 トランプはイラン攻撃の理由をいくつか挙げている(2月28日付演説) 。
 その一つに「イラン政権がもたらす差し迫った脅威を排除し、米国民を守ること」がある。けれども、イランがアメリカを攻撃している事実はないので「差し迫った脅威」というのはウソである。
 また、「核開発計画の再建を試み、…海外に駐留するわが軍を脅かし、やがては米国本土にも届きうる長距離ミサイルの開発を続けた。」と言っているけれど、イランが核兵器を開発しているとの根拠は示されていない。原子力の「平和利用」はイランの「奪いえない権利」(NPT4条)だ。また、ミサイル開発を禁止する国際的合意はない。
 更に、「イスラム革命防衛隊、軍、そしてすべての警察に告ぐ。今夜、武器を置け。」とか「あなたたちの自由の時は近い。外に出るな、家にとどまれ。外はきわめて危険だ。爆弾はいたるところに落ちる。われわれの作戦が終わったら、政府を奪い取れ。それはあなたたちのものになる。おそらく数世代に一度しかない機会だ。」などとも言っている。ここでは、無差別爆撃をチラつかせながら、イランに武装解除を迫り、市民に政権転覆を呼び掛けているのである。そもそも、トランプにそのような権限はない。

トランプの行為は殺人を含む犯罪
 これらの理由付けには、武力の行使を正当化する根拠は何もない。国連憲章が武力の行使を容認するのは、個別的あるいは集団的自衛権の行使と安全保障理事会の決定があった場合だけであり、今回の武力の行使にはそれらの事情はない。トランプの行為は、国連憲章に違反する露骨な内政干渉であり侵略行為なのだ。しかも、無差別攻撃も行われているので国際人道法違反でもある。
トランプは「私に国際法はいらない」(I don’t need international law.)としているけれど、その言明どおり、自分の行為の国際法上の合法性など視野にないのだ。トランプのイラン攻撃は、国際法上許容される武力の行使ではなく、大量殺人を含む前代未聞の犯罪である。トランプは稀代の「無法者」であることを確認しておく。

トランプのアメリカ憲法違反
 この攻撃は武力の行使であり、イランの反撃もあるので「戦争」である。けれども、今回のイラン攻撃は、米国議会による「戦争宣言」は行われていない。アメリカ憲法(松井茂記『アメリカ憲法入門第2版』)によれば、大統領に米軍の指揮権はあるけれど(第2条第2節(1))、戦争を宣言するのは議会の権限である(第1条第8節(11))。トランプは、この憲法の規定を無視して、イランへの戦争を仕掛けたのである。
更に、合衆国憲法にはこうある。

・この憲法およびそれに従って制定された合衆国の法律、合衆国の権限下で締結され、将来締結されるすべての条約は、国の最高規範である(第6条第2項)。
・大統領は、その職務の執行を開始する前に、次の宣誓または確約を行わなければならない―「私は、合衆国大統領の職を誠実に遂行し、全力を尽くして、合衆国憲法を保持し、保護し、擁護することを、誠心誠意誓います(確約します)(第2条第1節(8))。

 アメリカ憲法は、国連憲章を国の最高規範としており、トランプはこの憲法の擁護を誓っているはずである。だから、国連憲章に違反することは自らの宣誓に反することになる。そういう意味でも、トランプは稀代の「無法者」なのである。トランプは、ハメネイ師について「歴史上最も邪悪な人物」としているけれど、それはそのまま自分にブーメランのように帰ってくるであろう。

まとめ
 トランプは世界の秩序維持者のように振る舞うだけではなく、平和賞が欲しいと駄々をこねていた。そこにあるのは子供っぽい全能感と承認欲求だ。大言壮語はあるけれど、大義はない。彼はできの悪い王様か殿様のような存在なのだ。
 高市早苗にはそのトランプの行動を非難しようとする姿勢など全くない。トランプの脇でピョンピョン飛び跳ねている姿からして、彼女にトランプ批判を求めることは「ないものねだり」であろう。しかも、その彼女をアイドルのように推している選挙民もいるのだ。「自発的隷従」という言葉を思い出す。
 
 マスコミは、例外は散見されるけれど、トランプの行動を批判的には扱わず、トランプの演説を垂れ流している。日本の石油のことは心配するけれど、世界の秩序が稀代の無法者によって破壊されていることへの警鐘は鳴らされていない。国際法違反の指摘よりも、トランプやそれと同調する国際政治の動向の紹介が優先されているのだ。何とも情けない感性と知性だ。
 英、独。仏の政治指導者も同様である。イランの反撃は批判するけれど、トランプを批判しない。ここにも力にひれ伏し法を無視する倒錯がある。
 
 問題はトランプにこれだけの力があることだ。自意識過剰な男が世界最強の武力を持ち、それを濫用すれば、積み上げられてきた「法の支配」など破壊されてしまうのだ。それが、今、私たちの眼前で起きていることなのである。
 こうして世界はミサイルが飛び交う日常となっている。世界の多くの民衆が恐怖と欠乏の中での生活を強いられている。それは、明日のこの国なのかもしれない。憲法の非軍事平和主義など「ユートピア思想」だとして改廃しようとしているアメリカべったりの自民党が「サナエ旋風」によって衆議院で3分の2を超える議席を占めるようになったからである。
 トランプの振る舞いは「憎まれっ子世に憚る」そのままである。けれども「奢れる者は久しからず」も歴史の鉄則である。嵐が過ぎ去るのは待てばいいということではない。せめて、トランプの行動を非難し、高市早苗の正体を暴露することくらいはしておきたい。
 そして、いつの時代にも、必ず存在する「平和を愛する諸国民」との連帯を求めることとする。核兵器を持っている国が、核兵器を持っていない国に対して「核兵器を持つな」と迫り、その国の最高指導者とその家族をはじめ、多くの市民を殺すことなど許せないからである。(文中敬称略。2026年3月3日記)
 




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