2025.9.18
さいたま市見沼区に常泉寺という曹洞宗の寺がある。この寺に「広島・長崎の火」モニュメントが建立されている。「広島・長崎の火」とは、広島の焼け跡でくすぶっていた「広島の火」と長崎の原爆瓦から採火された「長崎の火」とが合わされたものだ。1988年に、埼玉県で合火されたこの火は、常泉寺の小山元一住職が灯し続け、1995年には、第1回目の「『広島と長崎の火』を囲むつどい」が開催され、2007年にモニュメントが完成している。そして、今年で31回目を迎えているのだ。この「囲むつどい」は、「さいたま・常泉寺『広島・長崎の火』を永遠に灯す会」が主催し、この火を永遠に灯して、核兵器と戦争をなくす被爆者と日本国民の願いを語り広げるための催しとして定着している。私は、9月7日に開催された今年の「囲むつどい」に講師として参加したのだ。テーマは、「核兵器も戦争もない世界を創るために」-「原爆裁判」を現代に活かす-だ。
ところで、私もその建立に賛同して寄付をしていたので名前が石碑に刻まれている。また、2002年には「常泉寺に『広島・長崎の火』を永遠に灯す会」総会で「核兵器をめぐる情勢と日本国憲法」と題する講演をしている。これらのことは、会の中心メンバーである原富悟・まり子さん夫妻に教えられるまで、すっかり忘れていたことだった。
2002年にどんな話をしたかは全く覚えていない。多分、そのテーマからして核兵器廃絶と9条の話をしたのであろう。けれども、当時は、核兵器禁止条約は話題になっていなかった。国際司法裁判所の勧告的意見は既に出ていたし、コスタリカとマレーシア政府から国連にモデル核兵器条約が提案されていたけれど、現在のような核兵器禁止条約の提案は、誰からも行われていなかったのだ。それが行われるのは、2002年から10年以上も経ってからの、いわゆる「人道的アプローチ」ということになる。そして、核兵器禁止条約は、2017年7月に採択され、現在では、94か国が署名し、73か国が批准する多国間条約として発効している。核兵器の開発、実験、保有、移転、配備、使用するとの威嚇、使用などはすべて違法とされ、その廃絶が展望されているのである。まさに「隔世の感」と言えよう。
私は、講演で、今、世界では、むき出しの暴力が横行しているし、核兵器使用の危険性もかつてなく高まっている。世界は大きな分岐点にあるなどと情勢も語ったけれど、この核兵器禁止条約の経緯を踏まえて、反核平和勢力は、決して、核兵器に依存する戦争勢力にやられっぱなしではないのだと力説した。
9月8日付『赤旗』はこんな記事を掲載している。日本反核法律家協会会長大久保賢一弁護士が講演。広島・長崎への原爆投下は国際法違反とした「原爆裁判」の判決について解説し、被爆者への支援に怠惰な「政治の貧困」嘆くなど、勇気ある判決だと述べました。2002年の「灯す会」のつどいでも講演し、「その時は核兵器禁止条約ができるなどとは思っていなかった」と話した大久保氏。「この80年間、核兵器は使用されなかったし、日本は海外で戦争をしていない。私たちが持っている憲法9条と核兵器禁止条約を生かしていくことが求められていると語りました。
9月10日付『毎日新聞』埼玉欄はつぎのような記事を掲載している。さいたま市見沼区の常泉寺で、核兵器の廃絶と平和を願う「『広島・長崎の火』を囲むつどい」が開かれた。約90人の参加者が境内に灯る「広島・長崎の火」のモニュメントに献花し、手を合わせた。…「さいたま・常泉寺に『広島・長崎の火』を永遠に灯す会」が95年から開き、被爆80年の今年は31回目。原冨悟会長は、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞などを挙げ「核兵器廃絶の世論は着実に高まっている。つどいが明日を切り開く一助になれば」とあいさつした。また、日本反核法律家協会会長の大久保賢一弁護士が、日本初の女性判事となった三淵嘉子さんをモデルにしたNHKの連続テレビ小説「虎に翼」に描かれ、原爆投下を国際法違反と断じた「原爆裁判」をテーマに講演し、その精神を現代に生かそうと訴えた。
このつどいには、広島と長崎の市長だけではなく、埼玉県知事やさいたま市長もメッセージを寄せている。常泉寺の副住職が来賓あいさつをしていたし、地域の親子連れや埼玉合唱団の歌もあった。私の心に残ったのは、原水禁大会に参加した人が、長崎の川から汲んできた水を、原爆投下の焼け野原に一番に芽を出し花を咲かせた「復活の花」といわれる夾竹桃の葉に浸して原爆瓦にかける献水式だ。水を求めて亡くなっていった被爆者に水を献ずる儀式なのだ。原富悟さんの発案だという。
全国各地にこのような粘り強い運動があるのではないだろうか。様々な地道な行動の継続こそが「核兵器も戦争もない世界を創るため」の最も必要な運動なのだと改めて確認した一日だった。主催者の皆さんありがとうございました。(2025年9月11日記)
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